「歯科医院に行ったら関係ない歯を治療された。」
時々聞く言葉だ、そのようなことが無いように気を付けないといけない。
昔、とある患者さんが上の前歯の差し歯が外れたということで来院された、何回も壊れるという。
その時の模型の写真はこれ、上の前歯が2本なくてその前歯があった位置に下の前歯がくいこんでいる、なんでこんなことに?
奥歯の方を見てみるとこんな様子だ。
下の奥歯何本か抜けているし傾いている歯もある、ここをみてみると
こんな様子だ、下の奥歯が押しつぶされたようになっている。
2つほど知ってもらいたいことがある。
1、下顎の骨は固定されているのではなく浮いた状態でその位置を決めているのは歯であるということ。
2、歯はかみ合ってないと浮き上がって長くなる、横の歯がないと傾く。
この2つのことをふまえてこの患者さんに起こったことを想像するとだいたいこのようなことになる。
下の奥歯を二本ほど抜いたけどその時はなんとなく食べれたし痛くないので放置、数年のちに奥歯一本で頑張っていた歯がすり減りながら傾いた。上の顎と下の顎の距離が近づいてきて上の前歯に下の前歯がくいこんで来て上の前歯が頻繁に壊れるようになってしまった。
困るのはここで前歯を治してほしいと言う患者さんの前歯をここだけなんとか形をととのえることができたとしても、また同じことのくり返しで数年もたないで壊れてしまうだろうし、顎の位置関係もますます悪くなっていくだろうということ、またそうなると首が痛くなったり肩に痛みが出てしまう。
ここはすぐ壊れてしまう前歯の治療より奥歯のかみ合わせを何とかする方を優先しないと状況は悪くなるばかりだ。
歯医者がいつも正しいとは限らないし、ちょっとまあ少し変わった人もいるだろう、関係ない治療というものの治療は完全には否定できない。
「あの~、どうも前歯がすぐ壊れるのは奥歯に問題があるみたいなんですけど、すこしお話してもいいですか?」
うまくわかってもらえるといいのだけど、評判の悪い歯医者にならないように恐る恐る話しかける自分が妙におかしい。
幸いなことにこの症例では何度も前歯が壊れる患者さんもなにか変だと思っていたらしく奥歯の治療から始めさせてもらった。